細胞治療科
細胞治療科

細胞治療は今までの治療とは全く違う新しい治療アプローチです。これまで難治性とされていたり、強い薬に頼るしかなかった病気が大きな副作用なく治療できる可能性があります。
武井動物病院ではそれをむやみに使うことはせず、論文や学会での最新の知見を元に、細胞治療が適用できるかどうかをしっかりと見極め、治療にあたらせていただきます。

*自家細胞とは
患者自身の細胞のこと。
自身の細胞であるため安全性は高いです。細胞培養に時間がかかるため、投与までのタイムラグがあります。

*他家細胞とは
患者自身以外の細胞のこと。
品質が安定し、効果、安全性に影響のないことが確認されています。
製剤化されているため細胞培養のタイムラグがなく、スピーディーな治療が可能です。

他家細胞による治療

武井動物病院は、産学官連携で安全かつ有効な細胞治療の実用化を目指す、動物再生医療技術研究組合(参照:https://parmcip.jp/project/)に所属しており、最新研究に基づいた細胞治療をスピーディーに提供することができます。
2020年10月現在、動物再生医療技術研究組合で実施している細胞治療の臨床研究対象疾患は、以下の通りです。

イヌ

消化器疾患 慢性腸症(CE)
肝胆膵疾患 肝炎、膵炎
内分泌疾患 糖尿病
神経疾患 椎間板ヘルニア、非感染性髄膜脳脊髄炎
眼科疾患 乾性角結膜炎(KCS)
骨・関節疾患 関節炎(変形性関節症・免疫介在性多発性関節炎)
血液疾患 免疫介在性溶血性貧血(IMHA)、免疫介在性血小板減少症(IMTP)、非再生性免疫介在性貧血(NRIMA)、赤芽球癆(PRCA)、再生不良性貧血(AA)
皮膚疾患 アトピー性皮膚炎

ネコ

呼吸器疾患 喘息
口腔疾患 慢性口内炎
消化器疾患 慢性腸症(CE)
肝胆膵疾患 胆管肝炎、膵炎
泌尿器疾患 慢性腎臓病
内分泌疾患 膵炎続発性糖尿病
神経疾患 非感染性髄膜脳脊髄脳炎
骨・関節疾患 変形性関節症、免疫介在性多発性関節炎
血液疾患 免疫介在性溶血性貧血(IMHA)
感染症 猫伝染性腹膜炎

これらの疾患でお悩みの方は獣医師にご相談ください。細胞治療が可能かどうか検討させていただきます。

自家細胞による治療

各種腫瘍に対して以下の治療が適用できます。

活性化リンパ球療法(CAT)の流れ(完全予約制)
この治療は、免疫細胞の中で兵隊のはたらきをするTリンパ球を増やす治療です。Tリンパ球が活性化することにより、腫瘍細胞を攻撃し、腫瘍の転移、再発が抑制できると言われています。
副作用がほとんどないこと、痛みや不快感を取り除く作用があること、他の治療と併用が可能なことが特徴です。

活性化リンパ球療法

① カウンセリング

腫瘍の診断および全身の状態の把握をするため、血液検査、X線検査、超音波検査などを行い、免疫療法ができるかどうか判断します。

② 診察、検査

家での状態や、今までの治療、今後の治療希望などをお聞きし、治療についてご説明します。

③ 結果説明、治療計画

検査結果により、免疫療法の適応と判断されれば、今後の治療計画を組み立てていきます。免疫療法の適応でないと判断された場合、別の治療を提案いたします。

④ 採血

午前中にお預かりし、処置を行い、午後のお迎えとなります。細菌の混入を防ぐため、部分的に毛刈りをして採血を行います。採血量は約12mlで、からだへの負担は特にありません。

⑤ 細胞培養

武井動物病院内の細胞培養室で、2週間培養を行います。その間、Tリンパ球の増え具合や異物混入など逐一チェックします。この2週間でTリンパ球は約1000倍になります。

⑥ 細胞注入

再び午前中にお預かりし、静脈点滴を行います。その後、静脈点滴内に増えたTリンパ球を注入し、午後まで異常がないか様子を見ます。異常がなければその日に家に帰って普段通りの生活ができます。

樹状細胞療法の流れ(完全予約制)

樹状細胞療法

樹状細胞は、腫瘍の顔を覚えて、兵隊であるTリンパ球に「この腫瘍を攻撃するんだよー」という指示を出す司令官のような細胞です。
腫瘍の顔を覚えている分、腫瘍をより特異的に攻撃することができるので、活性化リンパ球療法と併用すると、相乗効果でより高い効果が期待できます。

治療の流れは活性化リンパ球療法とほぼ同様ですが、樹状細胞療法の場合は、腫瘍に直接、または腫瘍近くのリンパ節に細胞を注入することが必要です。
そのため、腫瘍が肉眼的に確認できること、もしくは腫瘍細胞が手術で採取できることが適応の条件となります。

治療の詳細は病院までお問い合わせください。

PRP(多血小板血漿)療法

prp 多血小板血漿(Platelet Rich Plasma :PRP)療法は、自己の血液を遠心分離して得た、血小板を多く含む血漿分画を用いた治療方法です。

血小板は出血時に傷口で凝集して止血を行う役割があります。
血小板内には分泌顆粒があり、その中に多くの成長因子やサイトカインなどを含んでいます。
また、血小板を多く含む血漿中にも成長因子(HGF:肝細胞成長因子など)が含まれており、これらが組織の修復に重要な働きを担っているという報告があります。

有名な野球選手がPRP療法を行っていることが話題になったように、人ではスポーツ医学の分野で頻繁に行われており、整形外科分野で疼痛緩和などの有効性が報告されています。
また、治りにくい皮膚損傷や歯科分野の治療でも使用されています。
自己の血液を使用するため、アレルギーが起こりにくいことや感染の可能性が低いといったメリットがあります。
副作用としては、関節内に注入する場合、軽度の腫れが発生するといった報告がありますが、自己由来であるため重篤な作用は起きにくいとされています。また効果には個体差があり、全ての動物にとって有効であるとは限りません。

病気の治療には、適切な診断が何よりも重要ですが、当院では適用可能と判断した場合にPRP療法を取り入れています。
外傷治療や変形性関節症、関節炎等でお悩みの方はご相談ください。